
上司や取引先へのメールに「精進して参ります」と書いたものの、この言い方で失礼にならないだろうかと手が止まったことはありませんか?
結論からお伝えすると、「精進して参ります」は目上の方にも取引先にも使える、正しい敬語です。二重敬語でもありませんので、安心して使ってくださいね。
ただし、正しい敬語だからといって、どんな場面でも合うわけではありません。使う場面や添える言葉によっては、定型文のように聞こえたり、謝罪の場面で軽く受け取られたりすることもあります。
この記事では、意味や敬語としての根拠から、場面別の例文、「日々」「より一層」といった言葉の使い分け、言い換え、謝罪で使うときの注意点まで、やさしく解説します。
「精進して参ります」の意味とは?
「精進して参ります」は、しょうじんしてまいりますと読みます。
「精進」とは、一つのことに心を集中して、ひたむきに励むことです。もともとは仏教の言葉で、雑念を払って修行に打ち込むという意味から来ています。そこから、ビジネスの場でも「頑張ります」や「努力します」を、ていねいで誠実に伝える言葉として使われるようになりました。
「参ります」は、「行く」「来る」の謙譲語です。ただし、「精進して参ります」のように動詞の後ろにつくときは、「これからも続けていきます」という気持ちを、へりくだって伝える役割をします。つまり、「精進して参ります」は「これからも一つひとつ励んでいきます」という、継続する決意を表す言葉なのです。
なお、動詞のあとにつく「参ります」は、ひらがなで「まいります」と書くのが一般的です。ただ、漢字で「参ります」と書いても間違いではありません。
「精進して参ります」は正しい敬語?目上や取引先にも使える?
目上の方に使っても失礼にならないのは、敬語の使い方が正しいからです。二重敬語ではないかと心配される方もいますが、大丈夫です。二重敬語とは、同じ種類の敬語を一つの言葉に重ねてしまうことをいいます。「精進して参ります」の場合、敬語として働いているのは、へりくだった言い方の「参ります」だけです。「精進」は自分の行いを表す言葉で、敬語ではありません。そのため、敬語が重なっているわけではないのです。
では、同僚や部下に対してはどうでしょうか。使うこと自体は問題ありませんが、やや硬い印象になります。日常のやりとりで使うと、少し大げさに聞こえることもあるでしょう。
使い分けの目安は次のとおりです。
| 相手 | 使えるか | ひとこと |
|---|---|---|
| 上司・取引先 | ◎ | 安心して使えます |
| 社内の同僚・部下 | ○ | 使えるが硬め。改まった場面向きです |
「精進して参ります」を使える場面と例文
「精進して参ります」は、これからの決意を伝える場面で力を発揮します。主な場面と例文を見ていきましょう。
異動・昇進の挨拶
このたび営業部に異動となりました。一日も早く戦力になれるよう、精進して参ります。
上司からの激励への返答
ありがとうございます。いただいたお言葉を励みに、精進して参ります。
お礼のメール
先日はご指導いただき、ありがとうございました。教えていただいたことを活かし、精進して参ります。
年賀状・年始のご挨拶
旧年中は大変お世話になりました。本年も精進して参ります。
転職の面接
御社の一員として貢献できるよう、精進して参ります。
使うときのコツは、何に向けて励むのかを一言添えることです。「精進して参ります」だけで終えると、定型文のように聞こえてしまいます。例文のように「戦力になれるよう」「いただいたお言葉を励みに」と添えるだけで、気持ちがこもった印象になります。
「日々」「より一層」「引き続き」「これからも」の違い
「精進して参ります」の前に言葉を添えると、決意のニュアンスが変わります。代表的な4つの使い分けを見てみましょう。
日々精進して参ります
毎日の積み重ねを大切にする姿勢を表します。特定の場面に限らず使いやすく、メールの結びにも向いています。
ご期待に沿えるよう、日々精進して参ります。
より一層精進して参ります
今以上に励むという意気込みを表します。お褒めの言葉や期待の言葉をいただいたときに合います。
身に余るお言葉をいただき、ありがとうございます。より一層精進して参ります。
引き続き精進して参ります
これまでの姿勢を変えずに続ける、という意味合いです。すでに関係のある取引先や上司への、お礼のあとに自然に使えます。
長年のお引き立てに感謝申し上げます。引き続き精進して参ります。
これからも精進して参ります
やわらかく、親しみのある響きです。感謝を伝えたあとや、節目の挨拶に向いています。
温かいご支援をいただき、ありがとうございます。これからも精進して参ります。
「精進して参りますので」の意味と続け方
「精進して参りますので」の「ので」は、理由を表す言葉です。「精進していきますから、〜をお願いします」という、お願いや依頼につなげるための前置きとして使われます。
そのため、「ので」で文を終えてしまうと、言いかけで止まったような印象になります。必ず後ろにお願いの言葉を続けましょう。
続け方の定番は、次の3つです。
今後ともよろしくお願いいたします
もっとも使いやすい形です。取引先にも上司にも合います。
精進して参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます
「ご指導ご鞭撻」は、指導と励ましを意味する言葉です。教えを受ける立場から、上司や先輩に向けて使えます。
精進して参りますので、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます
取引先やお客様に、これまでの関係を続けてほしいときに合います。
精進して参りますので、変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
言い換え表現の使い分け
「精進して参ります」が少し硬いと感じるときや、同じ言葉が続くときは、言い換えると文章がすっきりします。印象と向いている場面をまとめました。
| 表現 | 印象 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 励んで参ります | やわらかく誠実 | 社内、上司への日常のやりとり |
| 努めて参ります | 控えめで丁寧 | 取引先へのメール、挨拶 |
| 尽力して参ります | 相手や周囲のために力を尽くす | 取引先、お客様への対応 |
| 邁進して参ります | 勢いがあり前向き | 新しい目標や挑戦 |
| 精進いたします | 言い切る簡潔さ | 改まったメール |
| 精進を重ねて参ります | かなり硬く、積み重ねを強調 | 年賀状、挨拶状 |
| 精進する所存です | 硬く、文書向き | 就任の挨拶状 |
| 頑張ります | カジュアル | 親しい間柄 |
迷ったときは、やわらかく伝えたいなら「励んで参ります」、相手のために動く姿勢を見せたいなら「尽力して参ります」を選ぶと、場面になじみます。
謝罪の場面で使うときの注意点
「精進して参ります」は、謝罪のメールや文書でも使えます。ただし、「精進」だけで反省を示そうとすると、気持ちが軽く伝わってしまうことがあります。「精進」は前向きな決意を表す言葉なので、謝罪の中心に置くと、何を反省しているのかが見えにくくなるためです。
謝罪では、お詫びの言葉、原因の説明、再発を防ぐ具体策の順に書くと誠意が伝わります。そのうえで、最後を結ぶ一言として「精進して参ります」を添えるのが適切です。
NG例
このたびはご迷惑をおかけしました。今後は精進して参ります。
OK例
このたびは納期に遅れ、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。原因は確認不足でした。今後は進捗を毎日共有する体制に改め、精進して参ります。
NG例は、何が問題だったのか、どう改めるのかが書かれていません。OK例のように、具体的な行動を示したうえで添えると、決意に説得力が生まれます。
まとめ
「精進して参ります」は、これからの決意をていねいに伝えられる、使い勝手のよい言葉です。
効果的に使うポイントは、何に励むのかを一言添えること、そして「日々」「より一層」などで場面に合ったニュアンスを選ぶことです。謝罪では、具体的な改善策とセットで結びの一言に使いましょう。
硬いと感じるときは、「励んで参ります」や「努めて参ります」に言い換えても大丈夫です。気持ちが伝わる一言を添えて、ぜひ日々のメールや挨拶で活用してくださいね。

