
「その認識で相違ございません」。上司や取引先からの確認に、こう返事をしたことはありませんか。
よく耳にする便利な言葉ですが、いざ自分で使うとなると、「目上の方に使って失礼じゃないかな」「そもそも使い方は合っているのかな」と、ふと不安になる方も多いようです。
結論からお伝えすると、「相違ございません」は正しい敬語で、上司や取引先にも使えます。ただし、使う場面によっては、少し硬すぎたり、不自然に聞こえたりすることもあります。
この記事では、意味や読み方から、「間違いございません」との違い、場面別の例文、「相違ございませんでしょうか」など間違えやすい形、言い換え表現まで、やさしく整理していきます。
「相違ございません」の意味と読み方
「相違」は「そうい」と読みます。意味は、2つのものを比べたときに「違いがあること」です。「相」には「互いに」という意味があるため、単なる「違い」よりも、比べる相手がいる違いというニュアンスが強くなります。
これに「ございません」が付いた「相違ございません」は、比べた2つの間に違いがない、つまり「その通りです」「合っています」という意味になります。「ございません」は「ありません」を丁寧にした言い方なので、全体としては「相違ありません」の丁寧な形です。
比べる相手がはっきりしているほど、意味が伝わりやすくなります。たとえば「ご認識と相違ございません」なら、相手の認識と自分の認識が同じだという意味です。「原本と相違ございません」なら、原本と手元の内容が同じだという意味になります。
「その認識で相違ございません」「ご認識の通りで相違ございません」「認識に相違ございません」も、言い方は少しずつ違いますが、どれもあなたのご認識で合っていますという意味で使われます。ちなみに「〜に相違ない」は、もともと「間違いなく〜だ」と言い切る硬い書き言葉の形です。
敬語として正しい?失礼?目上に使える?
結論からお伝えすると、「相違ございません」は正しい敬語で、上司や取引先にも使えます。「相違」は丁寧でも失礼でもない中立的な言葉で、そこに丁寧な「ございません」が付いているので、失礼にはあたりません。
気をつけたいのは、敬語としての正しさよりも、何に対して使うかです。「相違ございません」は、2つを照らし合わせて「違いがない」と確認する言葉です。そのため、日時、金額、内容といった事実の一致を確認したり、認めたりする場面にぴったり合います。
事実の確認に使う例
納期は10月末というご認識で、相違ございません。
一方で、相手の意見や考えに賛成するときは、あまり向いていません。照らし合わせて合否を判定しているように聞こえ、上から評価しているような印象を持たれることがあるからです。
意見への賛成には不向きな例
(「この進め方がよいと思います」と言われて)相違ございません。
こうした場面では、「おっしゃる通りです」と答えるほうが自然です。「おっしゃる通りで相違ございません」も間違いではありませんが、少しくどく感じられます。
なお、「相違」はやや硬い言葉なので、社内の気軽な会話では「その通りです」で十分です。
「間違いございません」「相違ありません」との違い
似た言葉がいくつもあって、迷ってしまいますよね。違いは、何を確かめているかにあります。
| 表現 | ニュアンス | 向く場面 |
|---|---|---|
| 相違ございません | 2つを比べて、違いがない | ご認識、原本、契約内容と合っていると伝えるとき |
| 間違いございません | 誤りがなく、正しい | 内容そのものが正しいと伝えるとき |
| 相違ありません | 「ございません」より少しやわらかい | 社内や、日頃やり取りのある相手との確認 |
| 相違はございません | 意味は同じで、「違いはない」と少し強調した印象 | 念を押して言い切りたいとき |
| 問題ございません | 支障や不都合がない | 都合や状態に差し支えがないとき(「相違」とは別の意味) |
迷ったときは、何と比べているかを言えるかどうかで決めると分かりやすいです。比べる相手があれば「相違」、なければ「間違い」と考えてみてください。実際には入れ替えても通じる場面が多いので、神経質になりすぎなくて大丈夫です。
場面別の使い方と例文
「相違ございません」は、場面によって少し形が変わります。そのまま使える例文を、場面ごとにまとめました。
確認されたときの返事(日時・内容・ご認識)
15日の打ち合わせ日時につきまして、ご認識の通り相違ございません。
ご連絡いただいた内容で、相違ございません。
メールでは、何についての返事なのかを最初に入れると、誤解がありません。
書類・金額・請求内容の一致を伝えるとき
請求書の金額は、見積書の内容と相違ございません。
記載の内容に相違ございません。ご確認をお願いいたします。
数字や書類は、ミスが起きやすい部分です。どの書類と何が合っているのかを添えると、相手も安心します。
ご指摘を認めて謝罪するとき
ご指摘の通り、こちらの手違いに相違ございません。ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。
この「〜に相違ございません」は、事実との一致ではなく、「確かにその通りです」と認める言い方です。
謝罪では、認めたあとにお詫びの言葉を続けるのがポイントです。「相違ございません」だけで終わると、そっけなく聞こえることがあります。
違っていたときの返し方
恐れ入りますが、金額の欄のみ相違がございます。正しくは5万円でございます。
反対に、違っていたときは、「相違ございません」とは言えません。違う点と正しい内容を、具体的に伝えましょう。
「相違ございませんでしょうか」「でした」「でしたら」は正しい?
形が変わると迷いやすいので、先に一覧にまとめます。
| 形 | 判定 | おすすめの言い方 |
|---|---|---|
| 相違ございません | ◎ 答えるときの基本形 | そのまま |
| 相違ございませんか | ◎ 確認するときの基本形 | そのまま |
| 相違ございませんでしょうか | △ 誤りとは言い切れないが、くどい | 相違ございませんか |
| 相違ございませんでした | ○ 確認し終えた事実を伝えるとき | 質問に答えるなら「相違ございません」 |
| 相違ございませんでしたら | △ 間違いではないが、かたい | 相違なければ |
「ございません」も「でしょうか」も、どちらも丁寧な言葉です。そのため丁寧さを重ねたくどい形になり、二重敬語だと感じる人もいます。ただ、二重敬語は本来「ひとつの語に同じ種類の敬語を重ねる」ことを指します。この場合は別々の言葉が重なった形なので、間違いと決めつける必要はありません。とはいえ気にする相手もいるので、「相違ございませんか」にしておくと安心です。やわらかくしたいときは、「恐れ入りますが」を前に添えましょう。
「でした」は、確認が済んだことを報告するときに使います。一方で、「合っていますか」と聞かれて「相違ございませんでした」と答えると、時制がずれて違和感が出ます。
再度確認したところ、記載の内容に相違ございませんでした。
「でしたら」は仮定の形です。間違いではありませんが、かたく響くので、「相違なければ」と言い換えるほうが自然です。
言い換え表現を場面別に
「相違ございません」の言い換えは、何を伝えたいかによって選ぶ言葉が変わります。場面別にまとめました。
| 場面 | 言い換え | 例文 |
|---|---|---|
| 意見や考えに賛成する | おっしゃる通りです/ごもっともです | おっしゃる通りです。その方向で進めます。 |
| 相手の認識が合っている | ご認識の通りです/その通りでございます | ご認識の通りでございます。 |
| 提案や案に反対がない | 異存ございません/異論ございません | その日程で異存ございません。 |
| 認識にズレがない | 齟齬ございません | 認識に齟齬ございません。 |
「齟齬」は、話や認識の食い違いを指す言葉です。2つを比べて違いがないことを示す「相違」と比べると、ズレがないことに重点があります。
まとめ
「相違ございません」は、日時、金額、内容など、事実が合っていると伝える場面で力を発揮する言葉です。確認を求めるときは「相違ございませんか」、相手の考えに賛成するときは「おっしゃる通りです」や「異存ございません」と、伝えたい中身に合わせて選ぶと、自然で失礼のない印象になります。
迷ったときは、例文をそのまま使ってみてくださいね。

