
来客の予定を上司に伝えるとき、「〇〇様がお見えになります」と言ってから、ふと「この言い方、本当に大丈夫かな?」と不安になったことはありませんか。
「お見えになる」は、「来る」の尊敬語として、ビジネスの場でよく使われる言葉です。ただ、「二重敬語では?」「方言っぽくない?」「いらっしゃるとは何が違うの?」と、細かいところで迷いやすい表現でもあります。
この記事では、「お見えになる」の意味から、二重敬語かどうか、方言との関係、似た表現との違いまでを、やさしく整理しました。場面別の例文も用意しているので、読み終えたその日から自信を持って使えるようになりますよ。
「お見えになる」の意味は?「来る」の尊敬語です
「お見えになる」は「おみえになる」と読み、「来る」を相手に敬意を込めて言い表す尊敬語です。目上の人やお客様がこちらに来ることを、丁寧に伝えたいときに使います。
もともと「見える」という言葉にも、「来る」の尊敬語としての使い方があります。たとえば「先生が見えました」は、「先生が来ました」を敬った言い方です。この「見える」を「お〜になる」の形にしたものが「お見えになる」で、より丁寧で改まった印象になります。
使い方の基本は、相手の動作に使うことです。尊敬語は相手を立てる言葉なので、自分がへりくだる謙譲語とは役割が違います。
本日は〇〇社の△△様がお見えになります。
最近は、「ご挨拶にお見えになる」という言い方の意味を調べる方も増えています。これは、相手があいさつのために訪ねてくることを表します。「ご挨拶」の「ご」は、相手の行為を敬う気持ちを添えたものです。
来週、取引先の部長がご挨拶にお見えになる予定です。
「お見えになる」は二重敬語?使っても失礼ではありません
結論から言うと、「お見えになる」は目上の人にも安心して使える表現です。
細かく見ると、「見える」だけでも尊敬語なのに、そこへ尊敬の形である「お〜になる」が重なっています。そのため、形のうえでは二重敬語にあたります。二重敬語とは、1つの言葉に同じ種類の敬語を重ねたもので、一般には適切ではないとされています。
ただ、語によっては、長く使われて習慣として定着したものがあります。「お見えになる」はその代表で、「お召し上がりになる」や「お伺いする」と同じ仲間です。文化審議会の「敬語の指針」でも、定着した例として挙げられています。二重敬語を気にして言い換える必要はなく、そのまま使って大丈夫です。
注意したいのは、さらに「られる」を重ねた「お見えになられる」です。こちらは定着していない二重敬語で、丁寧にしたつもりが回りくどく聞こえてしまいます。
× お客様がお見えになられました。
○ お客様がお見えになりました。
否定形も同じで、「お見えになられていません」ではなく、「お見えになっていません」が正しい形です。
「お見えになる」は方言?名古屋弁?
結論から言うと、「お見えになる」は方言ではなく、全国で通じる共通語です。国語辞典にも、「見える」が「来る」の尊敬語として載っています。名古屋弁でも関西弁でもないので、どの地域のビジネスの場でも安心して使えます。
それでも方言のように感じる人がいるのは、愛知県や三重県などの東海地方に、「〜してみえる」という地域独特の敬語があるためです。
先生が電話をしてみえる。
この「みえる」は、「来る」ではなく、「いらっしゃる」や「〜される」にあたる言い方です。標準的には「先生が電話をしていらっしゃる」と言います。同じ「見える」の形をしていても、意味がまったく違います。
見分け方は簡単です。誰かがこちらに来ることを表すなら共通語の「お見えになる」、動作をしている最中の人を敬うなら東海地方の「〜してみえる」です。
本日は部長がお見えになります。
ビジネスの場で来訪を伝えるときは、「お見えになる」の形で使えば問題ありません。
「いらっしゃる」「お越しになる」との違い
結論から言うと、どれも「来る」の尊敬語として使えます。違いは、使える範囲と印象です。
| 表現 | 来る | 行く | いる | 印象 |
|---|---|---|---|---|
| お見えになる | ○ | × | × | 来客を迎える場面で使う、あらたまった言い方 |
| いらっしゃる | ○ | ○ | ○ | 幅広く使える、いちばん万能な言い方 |
| おいでになる | ○ | ○ | ○ | いらっしゃるより少し改まった言い方 |
| お越しになる | ○ | ○ | × | 「来る」で使うことが多く、「お越しください」の形でよく見る |
| 来られる | ○ | × | × | 日常的で、敬意は控えめな言い方 |
「お見えになる」は、「来る」の意味にしか使えません。「行く」の場面では、別の表現を選びます。
× 部長は明日、大阪支社にお見えになります。
○ 部長は明日、大阪支社にいらっしゃいます。
迷ったときは、来る・行く・いるのすべてに使える「いらっしゃる」を選べば間違いありません。そのうえで、来客や取引先を迎える場面では「お見えになる」を使うと、きちんとした印象になります。「来られる」は気軽に聞こえやすいので、目上の人には、ほかの表現のほうが無難です。
「お見えになる」を使える相手・使えない相手
「お見えになる」は、敬意を向けたい相手が来るときに使います。
使える相手は、お客様や取引先の方、社内の上司や社長など、目上の人です。社内で上司の来訪を伝えるときも、問題ありません。
部長、〇〇社の△△様がお見えになりました。
社長は、午後2時ごろお見えになる予定です。
気をつけたいのは、社外の人に自社の人のことを話すときです。取引先から見れば、自社の部長や先輩は身内にあたります。たとえ社内では目上の人でも、社外の人の前では尊敬語を使いません。
× 担当の山田がお見えになりますので、少々お待ちください。
○ 担当の山田が参りますので、少々お待ちください。
自分自身が来たり訪ねたりするときも、「お見えになる」は使えません。自分の行動には、「参ります」「伺います」などの謙譲語を使いましょう。
場面別の例文と言い換え
「お見えになる」は、会話や電話で自然に使える言葉です。口頭でのやりとりなら、そのまま使って問題ありません。一方で、メールや文書では少し口語的に感じられるため、言い換えたほうが無難な場面もあります。
対面
午後3時ごろ、〇〇様がお見えになる予定です。
電話
〇〇先生は、何時ごろお見えになりますか。
メール
当日は〇〇様がお越しになると伺っております。
メールや文書では、次のような言い換えが使いやすいです。
お越しになる
「来る」の尊敬語で、文章にもなじみます。
ご来社・ご来店
訪ねてくる場所に合わせて選びます。会社なら「ご来社」、お店なら「ご来店」です。「ご来社いただき、ありがとうございます」のように、お礼にも使えます。
ご来社の際は、1階の受付までお声がけください。
まとめ
「お見えになる」は、「来る」の尊敬語として、ビジネスでそのまま使える言葉です。形は二重敬語でも定着していて、方言でもありません。
気をつけたいのは、「お見えになられる」としないことと、社外の人の前で自社の人に使わないことの2点です。メールや文書では、「お越しになる」などに言い換えると、さらに安心です。
来客や上司を迎える場面で、ぜひ自信を持って使ってみてください。

