
「ご厚情を賜り、誠にありがとうございます」——お礼状や挨拶文でこの言葉を見かけて、こんな疑問を持ったことはありませんか。
「これって読み方合ってる?」
「目上の人に使っても失礼にならない?」
「”賜りますよう”とはどう違うの?」
「ご厚情を賜り」は、ビジネスシーンやフォーマルな場面でよく使われる敬語表現ですが、意味や使い分けを曖昧なまま使ってしまうと、かえって相手に違和感を与えることもあります。この記事では、「ご厚情を賜り」の意味・読み方から、失礼にならない使い方、正しい例文までわかりやすく解説します。
「ご厚情を賜り」の意味と読み方
「ご厚情を賜り」は、「ごこうじょうをたまわり」と読みます。日常会話ではあまり見かけない言葉なので、はじめて目にすると読み方に迷う方も多いはずです。
言葉を分解してみると、意味がよくわかります。
- 「厚情(こうじょう)」:厚い情け、深い思いやり、心からの親切という意味
- 「ご」:厚情に敬意を添える接頭語
- 「賜り(たまわり)」:「もらう」の謙譲語である「賜る」の連用形
つまり「ご厚情を賜り」とは、目上の人や取引先から受けた「深い思いやり」や「厚い親切」をいただいた、という意味の表現です。「賜る」という謙譲語が使われていることからもわかるように、自分をへりくだらせて相手を立てる、格式の高い敬語表現になります。
そのため、日常の会話で使うことはほとんどなく、お礼状や年賀状、退職の挨拶、式典でのスピーチなど、あらたまった場面で使われるのが一般的です。
「ご厚情を賜り」は失礼にならない?使う場面と注意点
「ご厚情を賜り」は丁寧な表現ですが、使う相手や場面を間違えると、かえって不自然な印象を与えてしまうことがあります。
まず押さえておきたいのが、目上の人や取引先など、社外の相手に対して使う言葉だという点です。社内の上司や先輩に対して使うと、かしこまりすぎて距離感のある印象になってしまうため、避けたほうが無難でしょう。
また、意外と見落としがちなのが関係性の浅い相手への使用です。たとえば、まだ取引を始めたばかりの相手への初めてのメールで「このたびはご厚情を賜り」と書いてしまうと、実際にはそこまで深い関わりがないのに大げさな印象を与え、コピペしたような不自然さが出てしまいます。ある程度お付き合いのある相手に使うのが自然です。
さらに注意したいのが意味の重複です。「厚情」にはすでに「思いやり」や「気持ち」という意味が含まれているため、「ご厚情のお気持ち」「深いご厚情」といった表現は、意味が二重になってしまいます。「ご厚情を賜り」だけで十分に丁寧な表現なので、余計な言葉を重ねないようにしましょう。
「ご厚情を賜り」の例文(お礼状・年賀状・退職挨拶・スピーチ)
「ご厚情を賜り」は、シーンによって前後の言葉が少しずつ変わります。実際によく使われる例文を、場面別に紹介します。
お礼状・ビジネスメール
- 平素より格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
- お気遣いのお手紙をいただき、ご厚情に深く感謝申し上げます。
年賀状
- 旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
退職・転任の挨拶
- 在職中は皆様より一方ならぬご厚情を賜り、深く感謝申し上げます。
式典・スピーチ
- 本日はご多忙のところ、私どものためにご厚情を賜り、誠にありがとうございます。
いずれも共通しているのは、「誰から」「どんな厚情を」受けたのかが伝わるように、前後の言葉を添えているという点です。「ご厚情を賜り」だけで文章を終えず、「厚く御礼申し上げます」「深く感謝申し上げます」など、感謝を伝える言葉とセットで使うのが自然な形です。
「ご厚情を賜り」と「ご厚情を賜りますよう」の違い
「ご厚情を賜り」と似た表現に「ご厚情を賜りますよう」がありますが、この2つは時制と役割が異なるため、混同すると意味がずれてしまいます。
「ご厚情を賜り」=すでに受けた厚意へのお礼
これまでに実際に受けた親切や配慮に対して、感謝を伝えるときに使います。
- 平素より格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
「ご厚情を賜りますよう」=これから先の厚意をお願いする表現
まだ受けていない、これからの関係やお付き合いをお願いするときに使う表現です。
- 今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
- 何卒ご厚情を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
つまり、「もう受けたお礼」なのか「これから先のお願い」なのかで使い分ける必要があります。年賀状や挨拶状では、この2つを1文の中でセットで使うケースも多く見られます。
旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。本年も変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
このように、前半で感謝、後半で今後のお願いという構成にすると、自然な文章になります。
「ご厚情を賜り」の言い換え・類語
「ご厚情」には、意味の近い類語がいくつかあります。ニュアンスの違いを知っておくと、場面に応じて使い分けができます。
| 表現 | 読み方 | ニュアンス |
|---|---|---|
| ご厚意 | こうい | ご厚情とほぼ同義だが、ややカジュアル |
| ご厚誼 | こうぎ | 長年の親しい付き合いに焦点 |
| ご高配 | こうはい | 具体的な配慮・心配りに焦点 |
| ご厚志 | こうし | 贈り物など形のある厚意に対して使う |
ご厚意(こうい)
「ご厚情」とほぼ同じ意味ですが、ややカジュアルな印象の表現です。フォーマルな場面では「ご厚情」、それ以外では「ご厚意」を使うとよいでしょう。
- ご厚意に感謝しております。
ご厚誼(こうぎ)
「情愛のこもった親しいつきあい」という意味で、長年の関係性に対して使われることが多い表現です。
- 長年にわたりご厚誼を賜り、ありがとうございました。
ご高配(こうはい)
相手の「心配り」や「配慮」に焦点を当てた表現です。「ご厚情」が思いやりそのものを指すのに対し、「ご高配」は具体的な気遣いの行動に重きを置いています。
- 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
ご厚志(こうし)
心のこもった親切、特に贈り物や祝儀など、具体的な形のある厚意に対して使われることが多い言葉です。
- ご厚志をいただき、ありがたく存じます。
いずれも意味は近いものの、「思いやりそのもの」なのか「配慮という行動」なのか「関係性の深さ」なのかによって、少しずつ焦点が異なります。文章全体のバランスを見ながら、繰り返しを避けるために使い分けるとよいでしょう。
まとめ
「ご厚情を賜り」は、目上の人や取引先から受けた「深い思いやり」への感謝を伝える、格式の高い敬語表現です。社内の上司や関係の浅い相手に使うと不自然になりやすいため、相手やシーンを選んで使うことが大切です。
また、「ご厚情を賜り(お礼)」と「ご厚情を賜りますよう(依頼)」は役割が異なるため、伝えたい内容に合わせて正しく使い分けましょう。場面に応じた例文を参考にしながら、自然な形でこの言葉を活用してみてください。

