
「納期に間に合うか、気を揉んでおります」と上司に伝えようとして、ふと「この言い方、失礼にならないかな?」と手が止まった経験はありませんか。
「気を揉む」は、あれこれ心配して、やきもきするという意味の言葉です。ビジネスでは、自分の気持ちとして伝えるぶんには使えますが、相手の言動に向けて使うのは避けたほうが安心です。
この記事では、意味や使い方の基本から、使える場面と避けたい場面の見分け方、そのまま使える言い換え表現まで、やさしくご紹介します。
「気を揉む」とは?意味と読み方をやさしく解説
「気を揉む」は「きをもむ」と読みます。意味は、あれこれと心配して、やきもきすることです。
「揉む」には、押したりこすったりして、激しく揺り動かすという意味があります。心が揺さぶられて、落ち着かない様子をイメージすると分かりやすいですね。辞書には「気をいらいらさせる」という説明もあり、心配の中にじれったさが混ざっているのが特徴です。
とくに使われやすいのは、結果や返事を待つしかない場面です。試験の合否、取引先からの連絡、家族の帰りなど、自分ではどうにもならないことが気になって落ち着かないとき、「気を揉む」がぴったり当てはまります。
なお、「どこかの方言なの?」と聞かれることがありますが、方言ではなく、辞書にも載っている全国共通の表現です。
「気を揉む」の使い方と例文
「気を揉む」は、心配している人を主語にして、「気を揉む」「気を揉んでいる」「気を揉んだ」のように使います。「〜のことで」を添えると、何を心配しているのかが伝わりやすくなります。
「気が揉める」と言うこともできます。意味は同じで、自然と心配になってしまうニュアンスが加わります。一方で、「気が揉まれる」という言い方は一般的ではないので、避けておきましょう。
相手に心配をかけてしまうときは、「気を揉ませる」の形にします。
合否の連絡が来るまで、ずっと気を揉んでいた。
子どもの帰りが遅く、気を揉んでいる。
明日の天気が気になって、気を揉んでいます。
気を揉んでも仕方がないので、先に別の作業を進めましょう。
連絡が遅れて、家族に気を揉ませてしまった。
「気を揉んでも仕方がない」は、心配しても状況は変わらないと気持ちを切り替えるときの、よく使う形です。
ビジネスで「気を揉む」は使える?目上・社外への線引き
結論からお伝えすると、自分の心配を伝えるときは使えますが、相手の言動に向けて使うのは避けたほうがよい表現です。
「気を揉む」は、心配のなかにじれったさがにじむ、感情の出やすい言葉です。自分の気持ちとして話すぶんには問題ありませんが、上司や取引先の判断や行動に向けると、「やきもきさせられている」と受け取られかねません。
また、「気を揉む」には尊敬語や謙譲語の決まった形がありません。「気を揉んでおります」のように、丁寧な言い方に整えて使います。
使える例(自分の心配を伝える)
明日の発表がうまくいくか、気を揉んでおります。
引き継ぎがうまくいくか、気を揉んでいます。
避けたい例(相手の言動に向ける)
部長のご判断に、気を揉んでおります。
ご返信を、気を揉んでお待ちしております。
返信を待つ場面で「気を揉んで」と添えると、急かしているように聞こえてしまいます。取引先へのメールなど改まった場面では、別の言い方に置き換えるほうが無難です。
場面別|「気を揉む」のビジネス言い換え表現
「気を揉む」は、場面に合わせて言い換えると、より丁寧で落ち着いた印象になります。
| 場面 | 言い換え | 例文 |
|---|---|---|
| 自分の心配を伝える | 懸念しております/案じております | 先方の反応を案じております。 |
| 上司に相談する | 気がかりな点がございます | 来週の納期について、気がかりな点がございます。 |
| 相手に心配をかけたお詫び | ご心配をおかけし〜/心を煩わせ〜 | ご心配をおかけし、申し訳ございません。 |
| 相手の心配を気遣う | ご心労をお察しいたします/ご心配のことと存じます | 急なトラブルでのご心労、お察しいたします。 |
「懸念」は、この先に悪いことが起こるのではと不安に思う気持ちを表すので、報告や社外メールに向いています。「案じる」は、相手や物事を気にかけて心配する、少しやわらかい言い方です。
お詫びでは、「気を揉ませてしまい」と言うこともできますが、直接的な響きになるので、「ご心配をおかけし」のほうが無難です。また「ご心労」は相手の気持ちに使う言葉なので、自分の心配には使わないようにしましょう。
似た言葉との違い|やきもき・気が気でない・気に病む・気にする
「気を揉む」に似た言葉は、心配の強さと、気持ちが向かう方向で見分けると分かりやすくなります。
| 言葉 | ニュアンス | ビジネスでの使いやすさ |
|---|---|---|
| 気にする | 気になって意識が向く。心配の度合いは軽め | 使いやすい(「お気になさらず」など) |
| 気を揉む | 心配が続き、落ち着かない | 自分の気持ちとして使える |
| やきもきする | 意味はほぼ同じ。話し言葉で、じれったさが強め | 会話向き。メールでは避ける |
| 気が気でない | 心配で何も手につかないほど強い | 大げさに響くので控えめに |
| 気に病む | くよくよと思い悩んで、気持ちが沈む | 「気に病まないでください」と励ますときに |
「気を揉む」は、先のことが気になってそわそわする方向です。一方「気に病む」は、思い悩んで気持ちが沈んでいく方向で、同じ心配でも向かう先が違います。
なお、「気を使う」は相手への配慮を表す言葉で、心配する意味はありません。混同しないよう気をつけましょう。
まとめ
「気を揉む」は、使いどころさえ押さえれば、気持ちを素直に伝えられる便利な言葉です。迷ったときは、「これは自分の気持ちを伝える場面かな?」と考えてみてください。それだけで、言葉選びがぐっと楽になりますよ。

