
ビジネスメールで依頼やお断りを書くとき、「誠に勝手ではございますが」と書き出してみたものの、ふと手が止まってしまうことはありませんか?
「目上の人に使っても失礼にならないかな」「これって謝っていることになるのかな」と、不安になる方も多いと思います。
結論からお伝えすると、「誠に勝手ではございますが」は、取引先や上司にも使える丁寧な前置きです。ただし、お詫びの言葉ではないので、場面によっては別の言い方を選んだほうが安心です。
この記事では、意味や使い方から、そのまま使える例文、後ろに続ける言葉、使わないほうがよい場面、言い換え表現まで、順番にやさしく解説します。
「誠に勝手ではございますが」の意味と、敬語として正しいか
「誠に勝手ではございますが」は、「自分の都合で申し訳ないのですが」と、本題に入る前に断りを入れる前置きの言葉です。
「誠に」は「本当に」という意味で、「勝手」は相手よりも自分の都合を優先することを指します。そこに「ございます」を添えることで、改まった丁寧な言い方になっています。
敬語として正しいのか気になる方もいると思いますが、「ございます」は「あります」を丁寧にした丁寧語です。二重敬語のような誤りもなく、敬語として間違いではありません。取引先や上司、お客様など、目上の方にも安心して使えます。
この言葉は、お願いやお断りの前に添えて言い方をやわらげる、「クッション言葉」のひとつです。先に「誠に勝手ではございますが」と添えておくと、「こちらの都合を押しつけてしまうことは承知しています」という気づかいが相手に伝わります。
どんな場面で使う?使い方の基本形
「誠に勝手ではございますが」を使うのは、こちらの都合が、相手にとって負担や不便になりそうなときです。
たとえば、次のような場面があります。
- 相手に手間のかかるお願いをするとき
- 予定の変更など、相手に影響することを知らせるとき
- 参加や依頼をお断りするときや、お休みをいただくとき
使い方の基本は、次の4つの順番です。
- ① 前置き:「誠に勝手ではございますが」
- ② 理由:「〇〇のため」
- ③ お願い・お知らせ:「〜いただけますでしょうか」「〜させていただきます」
- ④ 結び:理解や協力をお願いする言葉
前置きだけで終わらせず、そのあとに理由をひと言添えると、一方的な印象がやわらぎます。
口頭でも使えますが、メールや案内文などの書き言葉のほうが、よりなじみます。
シーン別の例文3つ(依頼・お断り・お休み)
実際のメールでの使い方を、3つの場面でご紹介します。件名も添えているので、□□や〇月〇日などの部分を置き換えてそのままお使いください。
場面①:資料の送付をお願いする(取引先)
件名:資料ご送付のお願い
いつもお世話になっております。□□株式会社の××です。
誠に勝手ではございますが、社内での検討に必要なため、詳しい資料をお送りいただけないでしょうか。
何卒よろしくお願い申し上げます。
場面②:お誘いをお断りする(取引先)
件名:懇親会のお誘いへのお返事
このたびはお声がけいただき、ありがとうございます。
誠に勝手ではございますが、当日は先約があり、参加を見送らせていただきます。
またの機会にぜひご一緒させてください。
場面③:お休みをお願いする(上司)
件名:〇月〇日のお休みについて
〇〇部長、お疲れさまです。△△です。
誠に勝手ではございますが、私用のため〇月〇日にお休みをいただけますでしょうか。業務は前日までに引き継ぎます。
ご承認いただけますと幸いです。
後ろに続ける言葉は?「よろしくお願いします」と「ご理解」の使い分け
「誠に勝手ではございますが」のあとに「よろしくお願いします」と続けても、失礼にはなりません。ただ、それだけだと何をお願いしているのかがぼんやりしてしまいます。お願いごとに合わせて結びを選ぶと、気持ちがより伝わります。
お願いをするとき
「何卒よろしくお願い申し上げます」「ご検討いただけますと幸いです」
お知らせや変更を伝えるとき
「ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」「ご理解いただけますと幸いです」
「ご了承ください」も使えますが、「承知してください」という響きがやや強く、一方的に聞こえることがあります。目上の方には、やわらかい印象の「ご理解」のほうが安心です。また、「ご理解ください」と言い切る形は命令のように聞こえやすいので、「ご理解のほど」や「ご理解いただけますと幸いです」の形がおすすめです。
組み合わせると、次のようになります。
誠に勝手ではございますが、お電話でのご連絡はご遠慮いただき、メールでお願いできますでしょうか。何卒よろしくお願い申し上げます。
誠に勝手ではございますが、今後のご連絡はメールにてお願いしております。ご理解いただけますと幸いです。
使わないほうがいい場面(謝罪が必要なときと、大げさになるとき)
「誠に勝手ではございますが」は便利な前置きですが、合わない場面もあります。
お詫びが必要なとき
この言葉は「自分の都合で申し訳ない」と断りを入れる前置きで、お詫びの言葉ではありません。ミスをして相手に迷惑をかけたときに使うと、謝る気持ちが足りない印象になってしまいます。
避けたい書き方
誠に勝手ではございますが、誤った資料をお送りしてしまいました。
おすすめの書き方
誠に申し訳ございません。誤った資料をお送りしてしまいました。
お詫びが必要な場面では、2つ目のように、はっきりお詫びの言葉から始めましょう。
相手に負担のない連絡のとき
こちらの都合であっても、相手が困らない連絡にまで添えると、かえって大げさな印象になります。
避けたい書き方
誠に勝手ながら、年末年始は下記のとおり休業させていただきます。
おすすめの書き方
年末年始は下記のとおり休業いたします。
定休日や年末年始の休業のように、あらかじめ決まっているお知らせは、2つ目のようにすっきり書くほうが読みやすくなります。急な臨時休業のように、相手に影響が出る場合は、前置きを添えて問題ありません。
言い換え表現と「誠に勝手ながら」との違い
「誠に勝手ではございますが」は、伝えたい内容に合わせて言い換えると、より自然な文章になります。何を伝えたいかで選ぶのがコツです。
| 表現 | 向いている場面 |
|---|---|
| 誠に勝手ながら | お知らせや案内文 |
| 勝手なお願いではございますが | お願いをするとき |
| 勝手なお願いとは存じますが | お願いをするとき(より改まった場面) |
| お手数をおかけしますが | 相手に手間をかけるとき |
| 誠に恐縮ですが | 相手への気づかいや、恐れ入る気持ちを伝えるとき |
「誠に勝手ながら」と「誠に勝手ではございますが」は、意味はほぼ同じです。違いは言い回しの印象にあります。
「誠に勝手ながら」は短くまとまっていて、お知らせの文章や店頭の張り紙などで定番として使われています。一方の「誠に勝手ではございますが」は、やわらかく、より丁寧な印象です。メールで目上の方に伝えるときは、こちらのほうが使いやすいでしょう。
迷ったときは、「誠に勝手ではございますが」を選んでおけば安心です。
まとめ
「誠に勝手ではございますが」は、こちらの都合が相手の負担になりそうなときに添える、気づかいの前置きです。
お詫びが必要な場面や、相手が困らない連絡では、別の言い方のほうがすっきり伝わります。「この連絡は相手に負担をかけるだろうか」と考えてから選ぶと、迷いにくくなります。

