
「お待ち致しております」は、ビジネスメールや接客の場面でよく使う言葉ですが、「これって二重敬語なのでは」「間違った敬語なのかも」と不安になったことはありませんか。
結論からお伝えすると、「お待ち致しております」は正しい敬語表現です。実はこの言葉について、サイトによって「正しい」「間違い」と説明が分かれてしまっているのが実情です。なぜそのような食い違いが起きているのか、そしてなぜ正しいと言えるのか、この記事で分かりやすく整理していきます。
「お待ち致しております」は間違い?結論から解説
「お待ち致しております」という言葉、送るたびに「これで合っているのかな」と少し不安になる方も多いのではないでしょうか。
結論として、この表現は正しい敬語です。取引先へのメールや接客の場面で、目上の相手に対して使っても問題ありません。
ただ、この言葉について調べてみると、サイトによって説明がまちまちであることに気づきます。「正しい敬語」と紹介しているところもあれば、「二重敬語で間違い」と断言しているところもあり、どちらを信じればいいのか迷ってしまう状況になっているのです。
この食い違いが起きる原因は、「お待ち致しております」を構成している「いたす」と「おる」という2つの言葉の扱い方にあります。この2つを単純に同じ種類の敬語だと捉えると「敬語が重複している」ように見えてしまい、「二重敬語だから間違い」という結論になってしまうのです。
しかし実際には、この2つの言葉は敬語のなかでも異なる役割を持っています。役割の違いを正しく理解すれば、「間違いではない」ということがはっきりと分かります。
なぜ「二重敬語」と言われる?「いたす」「おる」の正体
「お待ち致しております」を分解すると、「お+待ち」+「いたす」+「おる」+「ます」という形になっています。このうち「いたす」と「おる」が、二重敬語と誤解されやすいポイントです。
「いたす」は「する」をへりくだって表す言葉、「おる」は「いる」をへりくだって表す言葉です。一見どちらも「謙譲語」に見えるため、「へりくだる表現を2つ重ねている=二重敬語」と判断されてしまうことがあります。
ですが、この2つは正確には丁重語(ていちょうご)と呼ばれる敬語に分類されます。丁重語は、話している相手そのものに敬意を示すための言葉で、一般的な謙譲語(相手の動作を高めるための言葉)とは役割が異なります。
そして二重敬語とは、本来「同じ種類の敬語」を重ねてしまうことを指す言葉です。「いたす」と「おる」は、それぞれ別の動詞(「する」と「いる」)に対する丁重語であり、しかも謙譲語そのものでもありません。そのため、二重敬語には当てはまらないのです。
丁重語という分類はあまり知られていないため、単純に「へりくだる言葉が2つ並んでいる」と見て「間違い」と説明してしまうサイトが少なくありません。これが、ネット上で情報が食い違っている理由です。
「お待ち致しております」の意味と読み方
「お待ち致しております」は「おまちいたしております」と読みます。
意味はシンプルで、「待っています」ということを丁寧に伝える言葉です。「待つ」という動作に、「お」(謙譲の接頭辞)と「いたす」「おる」「ます」という敬語を重ねることで、相手に敬意を払いながら「待っている」という気持ちを表しています。
なお、表記について一点だけ補足します。「致しております」の「致し」の部分は、本来ひらがなで「いたしております」と書くのが文法的には正式とされています。「致す」のように動詞そのものとして使う場合は漢字表記でも問題ありませんが、今回のように補助的な役割(〜している、という意味)で使う場合は、ひらがな表記が望ましいとされているためです。
とはいえ、ビジネスの現場では「お待ち致しております」と漢字で書かれることも非常に多く、これによって相手に失礼にあたることはありません。かしこまった案内状や正式な文書ではひらがな表記を意識し、日常のビジネスメールでは漢字表記でも特に問題ないと考えてよいでしょう。
ビジネスシーンでの使い方・例文
「お待ち致しております」は、相手の来訪を待つときや、連絡・返信を待つときなど、さまざまな場面で使うことができます。実際の例文を見ていきましょう。
相手の来訪を待つ場合
打ち合わせや来社の予定がある相手に対して使う表現です。
例)本日はご足労いただきありがとうございます。1階ロビーにてお待ち致しております。
例)〇月〇日のご訪問、心よりお待ち致しております。
連絡・返信を待つ場合
相手からの回答や連絡を待っていることを伝える際に使います。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。ご連絡をお待ち致しております。
資料をご確認いただけますと幸いです。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。ご連絡をお待ち致しております。
メールの結びで使う場合
本文の最後に添えることで、丁寧な印象を保ちながら文章を締めくくれます。
末筆ながら、皆さまのますますのご活躍をお祈り申し上げますとともに、今後とものご厚誼を賜りますようお待ち致しております。
「お待ちしております」「お待ち申し上げております」との違い
「待つ」を表す敬語には、「お待ち致しております」以外にもいくつかのバリエーションがあります。それぞれの違いを整理しておきましょう。
| 表現 | 敬意の度合い | 特徴 |
|---|---|---|
| お待ちしております | 標準的 | 社内・社外どちらでも使いやすい基本形 |
| お待ち致しております | やや高い | 「お待ちしております」よりも丁重な印象を与える |
| お待ち申し上げております | 最も高い | かしこまった案内状や重要な取引先向け |
「お待ちしております」は、日常的なビジネスメールや電話応対でも幅広く使える表現です。一方「お待ち致しております」は、それよりも一段丁寧な響きがあり、目上の相手や取引先へのメールに向いています。
さらに丁寧さを求められる場面、たとえば正式な案内状や重要な取引先とのやり取りでは「お待ち申し上げております」を使うこともあります。ただしこちらは堅苦しい印象になりやすいため、日常のやり取りでは「お待ちしております」や「お待ち致しております」を使うのが自然です。
社内の同僚や部下に対しては、ここまで丁寧な表現を使うとかえって距離を感じさせてしまうことがあります。相手や場面の格式に合わせて、3つの表現を使い分けるとよいでしょう。
まとめ
「お待ち致しております」は、正しい敬語表現です。「いたす」「おる」という2つの言葉は、一般的な謙譲語とは異なる丁重語に分類されるため、二重敬語には当てはまりません。
ネット上で情報が分かれているのは、この丁重語という分類があまり知られていないことが原因でした。仕組みを理解していれば、安心して使うことができる表現です。
相手や場面に応じて「お待ちしております」「お待ち申し上げております」と使い分けながら、丁寧なコミュニケーションに役立てていただければと思います。

