
「部長に、来週までに修正するようにと言われました」
上司への報告でこう言ってから、ふと「この言い方、失礼じゃなかったかな」と不安になったことはありませんか?
実は「言われた」は、ビジネスの場では少し気をつけたい言葉です。なぜなら、誰が言ったのかが、文だけでは分かりにくいからです。
言い換えのコツは、「相手が言ったのか、自分が言われたのか」を見分けること。ここさえ押さえれば、迷うことはぐっと減ります。この記事では、上司や取引先に使える言い換えを、例文つきでご紹介します。
「言われた」は敬語?受け身との違いとビジネスで避けたい理由
結論からお伝えすると、「言われた」は文法上は敬語になりえますが、ビジネスでは避けたほうがよい言葉です。
理由は、「言われた」の「れる」に2つの意味があるからです。
部長が言われた(尊敬:部長が言った)
部長に言われた(受け身:自分が言われた)
どちらも「言われた」のままで、形が同じです。相手を立てるつもりで「言われた」と言っても、受け身に聞こえてしまうことがあります。
さらに受け身には、「言われてしまった」という不満や被害のニュアンスが出やすいという難点もあります。「部長に言われました」と報告したら、不満そうに聞こえてしまった、ということも起こりえます。
「ます」をつけた「言われました」も、丁寧にはなりますが、事情は同じです。ビジネスでは、場面に合った別の言い方に置き換えるのが安心です。
相手が言ったときの言い換え:「おっしゃった」と二重敬語の注意点
上司や取引先が言ったことを伝えるときは、「おっしゃった」を使います。「言う」の尊敬語で、相手が主語のときの基本形です。
上司の発言を、別の上司に伝えるとき
部長が「来週の会議は延期する」とおっしゃっていました。
取引先の発言を、社内で共有するとき
A社の田中様が、納期を早めたいとおっしゃいました。
気をつけたいのが、「おっしゃる」に「れる」を足した「おっしゃられた」です。「おっしゃる」だけで敬意は十分なので、重ねると二重敬語になります。
もう一つは「申された」です。「申す」は自分をへりくだる謙譲語なので、相手の動作には使えません。「社長が申された」と言うと、相手を低く扱ってしまいます。
迷ったときは、「おっしゃった」「おっしゃっていました」の2つに絞っておけば、まず間違いありません。
自分が言われたときの言い換え:「伺った」「承った」「いただいた」の使い分け
自分が「言われた」側のときは、自分を主役にして、謙譲語で言い換えます。コツは、「言われた」を「聞いた」「受けた」に置き換えて考えることです。
「伺いました」
上司や取引先から、話や意見を聞いたときに使います。
部長から、来月の人事について伺いました。
「承りました」
依頼や指示を受けたときに使います。
部長から、報告書を今週中にまとめるよう承りました。
「ご指示いただきました」
指示をもらったことを、感謝の気持ちを込めて伝えるときに使います。
部長から、資料を直すようご指示いただきました。
先ほどの「おっしゃった」と並べると、違いがはっきりします。相手が主役なら尊敬語、自分が主役なら謙譲語です。
【相手が主語】部長が、資料を直してほしいとおっしゃっていました。
【自分が主語】部長から、資料を直すようご指示いただきました。
言われた内容別の言い換え一覧(指示・依頼・指摘・苦言)
「言われた」を言い換えるときは、何を言われたのかで選ぶと、ぴったりの言葉が見つかります。
| 言われた内容 | 言い換え | 例文 |
|---|---|---|
| 指示 | ご指示をいただく | 部長から、明日の訪問準備についてご指示いただきました。 |
| 依頼 | ご依頼をいただく | A社の田中様から、見積書の再提出をご依頼いただきました。 |
| 要望 | ご要望をいただく | お客様から、納期を早めてほしいとのご要望をいただきました。 |
| 指摘 | ご指摘をいただく | 先輩から、資料の数字に誤りがあるとご指摘いただきました。 |
| 注意 | ご指導をいただく | 上司から、報告が遅れないようご指導いただきました。 |
| 苦言 | ご助言をいただく | 部長から、準備不足についてご助言をいただきました。 |
| 教えてもらった | ご教示いただく | 先輩から、システムの操作方法をご教示いただきました。 |
注意や苦言のように耳が痛い内容も、ご指摘・ご助言・ご指導と前向きな言葉にすれば、相手への敬意を保ったまま、角を立てずに伝えられます。
「言われた通り」「と言われた」の言い換え
「言われた通り」は、何に従うのかで言い換えを選びます。
指示に従うとき
ご指示のとおりに進めてまいります。
指示どおりに終えたことを報告するとき
ご指示いただいたとおりに修正いたしました。
相手の意見にうなずくとき
おっしゃるとおりでございます。
「〜と言われた」は、「〜とのことです」にすると自然です。伝え聞いた内容を、角を立てずに報告できます。もう少し丁寧に伝えたいときは、「〜と伺っております」も使えます。
先方から、来週なら都合がつくとのことです。
目上の方からの伝言も、相手が主語になるので「おっしゃっていました」で伝えます。
「よろしくお伝えください」と言われたとき
田中様が、部長によろしくとおっしゃっていました。
メールと口頭での使い分けと例文
同じ内容でも、メールと口頭ではちょうどよい硬さが変わります。メールは記録に残るので、整った書き言葉で書きます。口頭では、堅くなりすぎない言い方のほうが自然です。
上司の指示を、チームに伝えるとき
メール
部長より、企画書を金曜までに提出するようご指示をいただいております。
口頭
部長から、企画書は金曜までにとのことです。
取引先の要望を、上司に報告するとき
メール
B社の佐藤様より、打ち合わせを来週に変更したいとのご連絡をいただきました。
口頭
B社の佐藤様が、打ち合わせを来週に変更したいとおっしゃっていました。
メールでは、誰からの何なのかをはっきり書くと誤解を防げます。
まとめ
「言われた」を言い換えるときは、次の2つの順番で考えると迷いません。
まず、誰が主語なのかを見分けます。相手が言ったのなら「おっしゃった」、自分が言われたのなら「伺った」「承った」「ご〜いただいた」です。
次に、何を言われたのかを具体的な言葉にします。指示・依頼・指摘など、内容がはっきりすれば、より自然で丁寧な言い方になります。
上司や取引先への報告で、ぜひ使ってみてください。

