
上司や取引先から何かを借りるとき、「拝借させていただきます」という言葉を使ったことがある方は多いと思います。でも、いざ使ってみると、こんな気持ちになったことはありませんか。
「これって二重敬語じゃないかな」「なんだか丁寧すぎて回りくどい気がする」「目上の人に使っても本当に大丈夫なのかな」
普段何気なく使っている言葉だからこそ、一度気になり出すと不安になってしまいますよね。この記事では、「拝借させていただきます」の意味や失礼にあたらないかどうか、シーン別の使い方、より自然な言い換え表現まで、まとめてご紹介します。
「拝借させていただきます」は失礼?二重敬語になる?
結論からお伝えすると、「拝借させていただきます」は誤用ではなく、目上の方や取引先に使っても失礼にはあたりません。
ただし、丁寧な表現を重ねた言い回しのため、場面によっては回りくどい印象を与えることがあります。「間違いではないけれど、状況に応じて言葉を選んだほうがすっきり伝わる」という感覚で捉えておくとよいでしょう。
「拝借させていただきます」の意味
「拝借させていただきます」は、大きく分けて2つの言葉から成り立っています。
まず「拝借」は、「借りる」の謙譲語です。自分がへりくだることで、相手を立てる表現になります。物やお金を借りるときはもちろん、「お知恵を拝借する」のように、アドバイスや協力をお願いする場面でもよく使われます。
次に「させていただきます」は、「させてもらいます」をより丁寧にした言い方です。ここには、相手の許可を得て何かを行うという意味合いが込められています。単に「〜します」と言うよりも、相手の存在を意識し、了承を得たうえで行動する姿勢が伝わる表現です。
この2つを組み合わせた「拝借させていただきます」は、「相手の許可のもと、謙虚な気持ちで借りさせてもらいます」という、かなり丁寧なニュアンスを持つ言葉になります。
なぜ「二重敬語・くどい」と言われるのか
「拝借させていただきます」が二重敬語ではないかと言われる理由は、先ほど触れたとおり「拝借」自体がすでに「借りる」の謙譲語であることにあります。そこに、同じく謙譲の意味を持つ「させていただく」を重ねているため、形の上では敬語を二重に使っているように見えてしまうのです。
ちなみに、「拝借」に「ご」をつけた「ご拝借」は、謙譲語に謙譲語を重ねた明確な二重敬語にあたるため、こちらは避けたほうがよい表現です。
一方で「拝借させていただきます」については事情が少し異なります。「させていただく」には、「相手の許可を得て行う」という独自の意味があるため、文法的な二重敬語というより、意味が重なって丁寧さが過剰に感じられるという側面が強いといえます。
そのため、かしこまった場面や、はっきりと許可を得たうえで借りる場面では自然に使える一方、日常的なやり取りの中で多用すると「くどい」「回りくどい」と感じられやすくなります。使う場面の格式や、相手との関係性に応じて、表現の丁寧さを調整する意識を持っておくとよいでしょう。
シーン別の使い方とメール例文
「拝借させていただきます」は、社内・社外を問わず使える表現ですが、シーンによって適した言い回しは変わってきます。ここでは具体的な例文とあわせてご紹介します。
社内(上司・先輩)へ使う場合
上司の持ち物や資料などを一時的に借りるときは、次のような言い方が自然です。
- 「部長、少しの間だけペンを拝借させていただきます」
- 「会議室の資料を、確認のため拝借させていただきます」
社内であっても、目上の方に対しては丁寧な印象を与えられる表現なので、安心して使えます。
社外(取引先)へ使う場合
取引先から資料や道具などを借りる場面では、よりかしこまった言い回しが求められます。
- 「恐れ入りますが、貴社の資料を一部、拝借させていただきたく存じます」
- 「お力添えをいただき、貴重なお時間を拝借させていただきました」
このように「恐れ入りますが」「〜たく存じます」などのクッション言葉と組み合わせると、より丁寧な印象になります。
メールでの文例
件名:資料拝借のお願い
いつもお世話になっております。〇〇株式会社の△△でございます。
先日ご紹介いただきました資料につきまして、参考にさせていただきたく、少々の間拝借させていただけますと幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
より自然な言い換え表現との使い分け
「拝借させていただきます」は丁寧な表現ですが、場面によっては、もう少しすっきりとした言い方のほうが伝わりやすいこともあります。ここでは代表的な言い換え表現との違いをご紹介します。
「拝借いたします」との違い
「拝借いたします」は、謙譲語「いたす」を使ったシンプルな丁寧表現です。「させていただく」のような許可のニュアンスを含まないため、日常的なやり取りではこちらのほうが自然に感じられる場面が多くあります。特別に許可を得る必要のない、ちょっとした貸し借りの場面ではこちらがおすすめです。
「お借りします」との違い
「お借りします」は「拝借」よりもやわらかく、口語に近い印象を持つ表現です。堅苦しさをやや抑えたいときや、社内の気心の知れた相手とのやり取りでは、こちらのほうが使いやすいでしょう。意味そのものは「拝借します」とほぼ同じです。
「拝借したく存じます」との違い
こちらは「借りたい」という希望を伝える表現です。今まさに借りる場面ではなく、これから借りることをお願いしたいときに向いています。「〜たく存じます」は「〜したいと思います」の謙譲表現なので、依頼のメールなどで使うと丁寧な印象になります。
いずれの表現も誤りではないため、相手との関係性や場面の格式に応じて使い分けることが、自然なコミュニケーションのポイントです。
まとめ
「拝借させていただきます」は誤用ではなく、目上の方や取引先に使っても失礼にはあたらない表現です。ただし丁寧さを重ねた言い回しのため、場面によっては「拝借いたします」や「お借りします」など、よりすっきりとした言い方を選ぶのも一つの方法です。相手との関係性やシーンの格式に合わせて、自然な表現を選んでいただければと思います。

