
「差し控えさせていただきます」という言葉、ニュースや記者会見でよく耳にしますよね。でも、いざ自分がビジネスで使おうとすると「これって正しい敬語なの?」「なんだか大げさすぎる?」と迷ってしまうことはないでしょうか。
この記事では、「差し控えさせていただきます」の意味と正しい使い方を、具体的な例文と一緒にわかりやすく解説します。よく混同される「控えさせていただきます」との違いや、場面に合った言い換え表現もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「差し控えさせていただきます」の意味
「差し控えさせていただきます」は、何かをあえて行わない・控えるという意思を、丁寧に伝える表現です。
ポイントは「差し控える」という動詞の意味にあります。「差し控える」とは、単に「やらない」ということではなく、トラブルや誤解を招かないように、あえて行動や発言を抑えるというニュアンスを持っています。「控える」よりも一段格式が高い言い方で、自制や慎重さが伝わる表現です。
そこに「させていただきます」が加わることで、相手に対してへりくだりながら、丁寧に意思を伝えるフレーズになっています。
ニュースや国会答弁で「コメントは差し控えさせていただきます」というフレーズをよく耳にするのは、この表現が持つ公式・格式のある断り方としての性質が、公的な場面にマッチしているからです。同じ理由で、社外の取引先や顧客への対応など、改まったビジネスシーンでも十分に使える表現です。
「差し控えさせていただきます」は敬語として正しい?
結論から言うと、「差し控えさせていただきます」は敬語として正しい表現です。ビジネスで使っても問題ありません。
ただし、「させていただく」という表現については、「過剰敬語では?」という指摘があるのも事実です。本来「させていただく」は、相手の許可がある場合や、自分にメリットがある場合に使うのが正しいとされています。「差し控えさせていただきます」は相手の許可を得ているわけではないため、厳密には使い方がグレーゾーンという見方もあります。
とはいえ、ビジネスの現場では「させていただく」をへりくだった丁寧表現として慣習的に使う場面が広く定着しています。「差し控えさせていただきます」もそのひとつとして受け入れられており、使うこと自体は問題ないと考えてよいでしょう。
より厳密な表現を使いたい場合の言い換えについては、後ほどの「シーン別の言い換え表現」でまとめて紹介します。
「控えさせていただきます」との違いは?
「差し控えさせていただきます」と「控えさせていただきます」は、どちらも何かを行わない意思を伝える表現ですが、ニュアンスと使いどころに違いがあります。
「差し控えさせていただきます」
丁寧さ・格式ともに高い表現です。「差し控える」には、トラブルや誤解を避けるために意図的・慎重に行動を抑えるというニュアンスがあります。社外の取引先や顧客への対応、公式なコメントを断る場面など、改まった状況で使うのに適しています。
「控えさせていただきます」
こちらも丁寧な表現ですが、「差し控える」と比べるとやや日常的でやわらかい印象になります。社内でのやり取りや、口頭でカジュアルに断りたい場面でも自然に使えます。
場面ごとの使い分けの目安は次のとおりです。
- 社外・取引先・公式な場面 → 「差し控えさせていただきます」
- 社内・口頭・やわらかく伝えたい場面 → 「控えさせていただきます」
どちらを使うか迷ったときは、相手との関係性や場の格式に合わせて選ぶのがポイントです。
ビジネスでの使い方と例文
「差し控えさせていただきます」が実際に使われる場面は、大きく3つに分けられます。
① コメント・回答を断る
質問に答えられない場合や、情報を開示できない場合に使います。理由を一言添えると、より丁寧な印象になります。
現在調査中のため、詳細についてのコメントは差し控えさせていただきます。
社内規則により、お問い合わせの件については回答を差し控えさせていただきます。
② 参加・出席を断る
取引先からの招待や社内イベントへの参加を丁重に断る場面で使えます。
先約がございますため、今回は参加を差し控えさせていただきます。
諸般の事情により、このたびの式典への出席は差し控えさせていただきます。
③ 喪中での挨拶を控える
年賀状や慶事の場面で、喪中であることを伝える際の定番表現です。
喪中につき、新年のご挨拶を差し控えさせていただきます。
いずれの場面でも、理由をひと言添えることで、相手に誠意が伝わりやすくなります。理由が言えない場合でも「諸般の事情により」「社内規則により」といった言葉を前置きするだけで、印象がぐっと柔らかくなります。
シーン別の言い換え表現
「差し控えさせていただきます」は格式のある表現ですが、場面によっては少し堅すぎる・冷たい印象を与えることもあります。状況に合わせて言い換えを使い分けると、より円滑なコミュニケーションが取れます。
格式を保ちつつ、より丁寧に伝えたい
→ 「差し控えたく存じます」
「させていただく」を使わない分、すっきりとした印象になります。公式文書や目上の方への連絡など、特に丁寧さを求める場面に適しています。
やわらかく断りたい
→ 「ご遠慮させていただきます」
「差し控える」よりも日常的でマイルドな表現です。社内や取引先との日常的なやり取りで使いやすく、相手に威圧感を与えにくいのが特徴です。
回答・説明を断る場面で簡潔に伝えたい
→ 「お答えしかねます」
シンプルで簡潔な表現です。「差し控えさせていただきます」が「あえて控える」という自制のニュアンスを持つのに対し、こちらは「答えることが難しい」という状況を率直に伝えます。
相手との関係を大切にしながら断りたい
→ 「ご遠慮申し上げます」
やや改まったトーンで、「断る」よりも「遠慮する」という謙虚な姿勢が伝わります。取引先へのメールなどでも使いやすい表現です。
まとめ
今回は「差し控えさせていただきます」の意味と使い方を解説しました。最後に要点を整理しておきます。
- 「差し控えさせていただきます」はトラブルや誤解を避けるために、あえて行動・発言を控えるという意味の敬語表現
- 「させていただく」の使い方にグレーゾーンはあるものの、ビジネスで使って問題ない表現として広く定着している
- 「控えさせていただきます」より格式が高く、社外・公式な場面に適している
- より丁寧に表現したい場合は「差し控えたく存じます」が使いやすい
- 場面によっては堅い印象を与えることもあるため、「ご遠慮させていただきます」「お答えしかねます」などへの言い換えも活用する
「差し控えさせていただきます」は、使いこなせるとビジネスパーソンとしての言葉の引き出しがぐっと広がる表現です。場面に合った使い方を意識しながら、ぜひ活用してみてください。

