
「ありがとうございます」と感謝されたとき、とっさに「はい」とだけ返してしまったことはありませんか?
あるいは、上司から「ありがとう」と言われて、「どういたしまして」と返したら少し空気が変わった……そんな経験をお持ちの方もいるかもしれません。
実は、「ありがとうございます」への返事は、相手との関係性や場面によって適切な言葉が変わります。何気なく使っているフレーズが、知らず知らずのうちに相手に失礼な印象を与えてしまうこともあるんです。
この記事では、上司・取引先・同僚など相手別に、ビジネスで使える「ありがとうございます」への返し方を具体的にご紹介します。「とんでもないです」や「いえいえ」は使っていいのか、メールで感謝されたときはどう返すのか、といった細かい疑問にもお答えします。
「ありがとうございます」への返事、基本の5パターン
「ありがとうございます」と言われたとき、どんな言葉を返せばいいのか。まずは基本のフレーズを5つ押さえておきましょう。
どういたしまして
最もオーソドックスな返し方です。ただし、目上の人や取引先に使うと「上から目線」に聞こえることがあるため、ビジネスでは使う相手を選ぶ必要があります。同僚や後輩への返事としては自然です。
とんでもないです
「そんなお礼を言っていただくほどのことはしていません」という謙遜の表現です。上司や目上の人から感謝されたときに使いやすく、ビジネスでもよく使われます。ただし一言だけで返すと素っ気ない印象になるので、一言添えるのがポイントです。
こちらこそありがとうございます
お互いに感謝し合える関係のときに自然に使える表現です。取引先との関係や、協力して何かをやり遂げた後などに特に効果的です。
恐縮です
「ありがたく思うと同時に申し訳ない気持ち」を表す、フォーマルな表現です。上司や取引先からの感謝に対して使うと、丁寧かつ誠実な印象を与えられます。「ありがとうございます」と組み合わせて使うとより自然です。
お役に立てて光栄です
感謝を素直に受け取りながらも、相手への敬意をしっかり示せる表現です。フォーマルな場面や、重要なプロジェクトの後などに使うと特によい印象を残せます。
ビジネスで迷ったときは、「恐縮です」か「お役に立てて光栄です」を選んでおくと、まず失敗しません。「どういたしまして」は親しい同僚や後輩限定と覚えておくとスムーズです。
上司・目上の人から感謝されたときの返し方
上司や先輩から「ありがとう」と言われる場面は、意外と返事に困るものです。咄嗟に出てきた言葉が印象を左右することもあるので、あらかじめ適切な表現を知っておくと安心です。
「どういたしまして」はなぜNGなのか
「どういたしまして」は文法的には正しい敬語ですが、「大したことはしていません」というニュアンスが含まれるため、目上の人に対しては「軽く扱っている」と受け取られることがあります。親しい同僚や後輩への返事なら問題ありませんが、上司や先輩への返事としては避けておくのが無難です。
「いえいえ」も使い方に注意
口癖のように「いえいえ」と返す方も多いですが、これも目上の人に対してはカジュアルすぎる印象を与えることがあります。完全にNGとは言えませんが、それだけで終わらせず、後に続く言葉をセットで使うようにしましょう。
上司・目上の人への推奨フレーズ
- 「恐縮です。今後もお役に立てるよう努めます」
- 「もったいないお言葉です。ありがとうございます」
- 「お役に立てて光栄です。引き続きよろしくお願いいたします」
いずれも、謙遜しつつ前向きな姿勢を一言添えるのがポイントです。感謝を受け取るだけで終わらず、「これからも頑張ります」という気持ちを短く添えると、上司への好印象につながります。
「とんでもないです」「とんでもございません」は使っていい?
「ありがとうございます」への返事として、「とんでもないです」や「とんでもございません」を使っている方は多いと思います。ただ、「これって正しい敬語なの?」と不安に感じたことはありませんか?
厳密には誤用だが、使っても問題ない
「とんでもない」はひとつの形容詞のため、本来「ない」の部分だけを「ございません」に置き換えることはできません。文法的に正しい形は「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」です。
ただし、文化庁の「敬語の指針」(2007年)では「とんでもございません」を容認する方針が示されています。現在では多くのビジネスシーンで広く使われており、使ったからといってマナー違反になるわけではありません。
とはいえ、言葉遣いに厳しい方や年配の方の中には、誤用と感じる人もゼロではありません。より丁寧さを意識したい場面では「とんでもないことです」を使うと安心です。
「とんでもないです」だけで終わらせないのがコツ
どちらの表現を使う場合も、一言だけで返すと素っ気ない印象になりがちです。後に続く言葉をセットにすることで、ぐっと印象がよくなります。
- 「とんでもないです。お役に立ててよかったです」
- 「とんでもないことです。こちらこそありがとうございます」
- 「とんでもございません。引き続きよろしくお願いいたします」
一言添えるだけで、謙遜しながらも温かみのある返事になります。
取引先・お客様から感謝されたときの返し方
取引先やお客様からの「ありがとうございます」は、上司からの感謝とはまた少し異なります。社外の相手だからこそ、言葉の選び方や返し方が会社全体の印象にもつながります。
対面・電話での返し方
対面や電話では、言葉だけでなく声のトーンや間の取り方も大切です。感謝の言葉をもらったときに、慌てて返したり、棒読みのように答えたりすると、せっかくの言葉が軽く聞こえてしまいます。
落ち着いたトーンで、次のようなフレーズを使うとよいでしょう。
- 「恐縮です。お力になれて何よりでございます」
- 「こちらこそ、いつもお世話になっております」
- 「ありがとうございます。今後もどうぞよろしくお願いいたします」
電話対応では特に、相手の言葉をしっかり受け止めてから返事をするよう意識すると、誠実な印象を与えられます。
メールでの返し方
取引先からお礼のメールが届いたときは、長々と返信する必要はありません。簡潔に感謝を受け取り、今後の関係につながる一言を添えるのがスマートです。
- 「ご丁寧にありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします」
- 「お心遣いいただき恐縮です。今後ともお役に立てるよう努めてまいります」
過剰な謙遜は逆効果になることも
「いえいえ、私なんて全然…」のように過度に謙遜しすぎると、相手が「褒めるんじゃなかった」と感じてしまうこともあります。感謝はしっかり受け取った上で、謙虚さと前向きな姿勢をバランスよく伝えるのが大切です。
やってしまいがちなNG返事
「ありがとうございます」への返し方で、つい無意識にやってしまいがちなNG例をご紹介します。自分では気づいていないケースも多いので、一度確認しておきましょう。
「はい」だけで終わらせる
返事はしているものの、「はい」の一言だけでは感謝を受け取った感じが相手に伝わりません。特にビジネスの場では、素っ気ない印象や、感謝を軽く扱っているような印象を与えてしまうことがあります。何か一言添えるだけで印象は大きく変わります。
無言・頷くだけ
照れくさくて言葉が出ない、という方もいるかもしれません。しかし無言や会釈だけで済ませると、相手は「ちゃんと伝わったのかな」と不安になることも。対面の場でも、短い言葉をひとつ添える習慣をつけておきましょう。
「大したことないです」「それほどでも…」
謙遜のつもりで使いがちな表現ですが、相手の感謝の気持ちを否定するニュアンスになってしまいます。せっかく感謝してくれた相手が「褒めなければよかった」と感じてしまうこともあるので注意が必要です。
謙遜が長くなりすぎる
謙虚さは大切ですが、「いえいえ、私なんてまだまだで、本当に皆さんのおかげで……」と長々と続けてしまうと、会話のテンポが崩れ、かえって相手を困らせてしまいます。謙遜は短く、そして必ず前向きな一言でしめくくるのがコツです。
ビジネスメールで「ありがとうございます」と返ってきたときの返し方
自分がお礼のメールを送ったら、相手から「ありがとうございます」と返信が来た。そんなとき、「また返信すべき?でも何を書けばいいんだろう」と迷った経験はありませんか?お礼のお礼メールは、ビジネスメールの中でも対応に迷いやすい場面のひとつです。
返信すべき?しなくていい?
相手からの返信内容が「ご丁寧にありがとうございます」「今後ともよろしくお願いいたします」といった短い締めくくりであれば、返信しなくても失礼にはあたりません。むしろ不要なやりとりを続けることで、相手の手を煩わせてしまうこともあります。
一方、相手が何か具体的な内容に触れていたり、次のアクションを示唆する内容が含まれていたりする場合は、簡潔に返信しておくのが無難です。
返信するときに使えるフレーズ
返信する場合は、長くなりすぎないことが大切です。2〜3行でまとめるのが理想です。
- 「ご丁寧にご返信いただきありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
- 「お心遣いいただき恐縮です。またお力になれることがあれば、いつでもお声がけください」
やりとりを丁寧に終わらせる「返信不要」の伝え方
お礼のやりとりが何往復も続きそうなときは、こちらから丁寧に締めくくる一文を添えると親切です。「返信不要です」と直接書くと少し冷たく聞こえることもあるので、次のような表現を使うとスマートです。
- 「なお、本メールへのご返信はお気遣いなく」
- 「ご返信はお気になさらないでください」
相手への気遣いを示しながら、自然にやりとりを終わらせることができます。
まとめ
「ありがとうございます」への返事は、何気ない一言のようで、相手との関係をじわじわと築いていく大切なコミュニケーションです。
相手別のポイントをざっとおさらいすると、上司や目上の人には「恐縮です」「お役に立てて光栄です」などの謙虚さと前向きさを兼ねた表現が◎。取引先やお客様には、簡潔に感謝を受け取りつつ今後の関係につながる一言を添えるのがスマートです。同僚や後輩であれば「どういたしまして」「こちらこそ」など、自然体の言葉で十分です。
「とんでもないです」は使っても問題ありませんが、一言だけで終わらせず、後に続く言葉をセットにするひと手間が印象を大きく変えます。
そして何より避けたいのが、「はい」だけで終わらせたり、無言で済ませたりすること。感謝の言葉には、必ず何か一言を返す習慣をつけておくだけで、ビジネスの場での印象はぐっとよくなります。
ぜひ今日から、場面に合った返し方を意識してみてください。
